天若湖アートプロジェクトの目指すもの

天若湖アートプロジェクトの目指すもの (2011年度改訂)



<序>
 私たち天若湖アートプロジェクト実行委員会は、平成17年(2005)夏より、夜の湖面にかつての村々のあかりを灯す「あかりがつなぐ記憶」を中心に、「天若湖アートプロジェクト」を実施してきました。
 私たちは「天若湖アートプロジェクト」の趣旨を、初年度に公けにしています。そこに挙げられた基本的な考えは、今も変わることはありません。それは、真新しい湖面に地元の方や流域市民が触れる機会を創り出し、活き活きとした場としていくこと(新たな湖面利用の提案)を通じて、上下流の共感形成に資する(流域連携)というものです。
 この間、地元及び流域内外の多くの方のご支援をいただき、またいろいろな交流が生まれました。繰り返し訪れるうちに、私たちの日吉と天若への思いにもさまざまな変化がありました。
 そこで今般、7年間の活動の中での気付きを踏まえ、趣旨文「天若湖アートプロジェクトの目指すもの」の改訂を行うことといたしました。
 天若湖アートプロジェクトは、アート分野に留まらないさまざまなグループの連携によって運営されています。本趣旨をご一読いただき、さらなる地域活性化の契機として、あるいは新たな表現を拓く場として、より多くの人々に関わっていただき、役立てていただくことを期待しています。




 日吉ダムは、桂川流域の治水と京阪神地域での水需要の増大を受けて、平成10年(1998)に完成したばかりの新しいダムです。「地域に開かれたダム」のコンセプトのもと、温泉等多くの施設が建設され、多くの来訪者に利用されています。平成16年(2004)に は、湖面利用のルールも定められ、新しい公共空間である湖面が幅広く市民に開放されることとなりました。

 しかし、新しい水面である天若湖は、地域の歴史文化に根ざした人との関わりを持っていません。バス釣りに代表される釣り客のボートが見られる他には、湖面を利用する人はあまり見られません。
  かつてこの地には、桂川とともに生きた集落がありました。昭和63年(1988)に日吉町によって編まれた「日吉ダム水没地区文化財調査報告書」は、今は平坦な水面と なっているこの場所に、豊かな生活文化をもった村があったことを伝えています。そして、地域の自然とともにあったその集落が湖底に消えたのは、比較的最近のことなのです。

 わたしたちは、この真新しい場所に昔に負けないくらいの生き生きとした息吹を取り戻したい、と考えます。そして、そのためには、地域の方々の思いとダムの意味を、川とのつきあい方や考え方も異なる流域のさまざまな人々が知り、共有しながら、この場所に触れていくほかないのだと考えます。

 しかし上下流の人々の間をつなぐには、ことばだけでは不十分です。その環境を生きてきた人々の実感と、それを消費してきた人々の一般論とは、それらがことばにされる時、すれちがってしまうことが多いのです。それを越えるものとして、私たちはアートを見つけました。

 アートは結論めいたものを示すものではありません。また地域の問題を解決するものでもありません。しかし、生きた時代やことば、属している集団や共同体を超えて問いかけます。それは社会に現れたり潜在したりしている、さまざまな課題に気づきを与え、同時に人々を繋いでいく力を持ちます。

 天若湖アートプロジェクトは、風景とアートの力によって、水没地域、地元そして流域のそれぞれの人々が、ともにこの場所に触れ、地域固有の魅力や課題を感じ、それについて考える機会を創り出します。この経験は上流と下流との共感を創り出し、天若、日吉地域のみならず桂川流域、ひいては淀川流域全体の環境への、人々の意識を更新していくものと考えます。

 アーティストだけでなく、むしろ市民自身が新しい天若湖の姿を生み出し、提示し続ける。そうしたかつてないアートのかたち、流域連携のかたちが、天若湖アートプロジェクトなのです。(2011年5月)




桂川の河川環境と桂川流域ネットワーク


 桂川とその支流は、1000年以上にも亘って京の都と、都と関わってきた地域を繋ぎ、支えてきました。
 第二次大戦後の広範な開発の中で、川の姿は大きく変わりました。水質は悪化し、生き物は棲みにくくなり、私たちの目に映る景観も損なわれていきました。水害の根絶も目指して整備された護岸やダムも、近年の異常気象の頻発の中で、そのあり方が見直されるようになってきました。
 そして、これらの河川環境の問題は、森や農村、都市の問題と切り離せないものを多く含んでいます。
 川の病いは、川をいじるだけでは治らないのです。
 川を軸とする地域環境の再生のためには、川辺の人とまちの人、上流の人と下流の人、市民と専門家そして行政、それぞれの間での相互理解と合意形成が欠かせません。またその前に、誰もが川にもう一度近づくことが求められています。
 2001年から2002年にわたり、第3回世界水フォーラムに向け、NPO法人世界水フォーラム市民ネットワークと京都府とのパートナーシップによって「桂川上下流交流事業」が開催されました。桂川流域ネットワークはその成果と志を引き継ぐべく生まれました。
 桂川流域ネットワークは、桂川流域を舞台に、そうした水とのふれあいと、コミュニケーションの機会を作り出します。そして、桂川流域のこれからのための、提案と行動を行っていきます。(2005年8月)
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by amawakaAP | 2011-06-01 15:50 | 実行委員会たより | Comments(0)

京都府どまんなか、日吉ダム周辺を舞台としたコミュニティ・アートの祭典です